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和田耕一かめびし醸造職人への道
和田耕一かめびし醸造職人への道(6)

お客様の食卓にかめびしの醤油が登場するまでには、さまざまな作業があります。今回は、その作業のなかでもクライマックスに近い作業について、耕一さんが初めて体験したときのエピソードです。

クライマックスに近い作業というのは、製品を商品に仕上げる作業のことです。かめびしでは、ラベル貼りや、箱詰めの作業を「仕上げ」と呼んでいます。仕上げは、ほとんどの細かい作業が手作業で行われていきます。したがって、この作業では、新人さんと先輩社員との間には、初めは嫌になるくらいに圧倒的な技術の差がついてしまうのです。

例えば、「にがり入り濃口醤油の0.9L」という商品があります。この商品は、ビニール袋に入って販売されています。この醤油の仕上げには、まず、瓶にラベルを貼り、ビニール袋に醤油瓶と商品説明のラベルを入れ、ビニタイと呼ばれるテープで袋の口をとめていき、箱に入れる。という、作業の流れがあります。だいたい、3人から5人で流れ作業で仕上げていきます。

新人さんは、一つの作業がある程度の速さでこなしていけるまでは、一つの作業に徹してやっていきますが、他の人達は、仕上げの流れを滞りなく進めていくために、全体の流れにそれぞれが気を配って、常にもっとも効率の良い配置で仕上げが進められるように、前後の作業を分担しながらやっていくのです。

そういった流れを読みながら作業をしていく以前に、一つ一つの作業がしっかり出来るようになるまでが新人さんにとっては大変なのです。

先輩社員の原君の作業を見ていると、アッという間に、醤油を手に取り、ラベルとあわせて、製造年月日などの日付も確認しながら、袋にいれていきます。しかも、連続で何十本、何百本と続けて入れていきます。

その想像を超えたあまりの速さに、「この人は機械なんじゃねえか!」と本気で驚いてしまったようです。耕一さんも挑戦してみると、自分が一本入れている間に、4本5本と原君は、入れてしまっています。

新人耕一さんの作業が全体の流れからまったくかけ離れたところにあるのは、当然なことなのです。あせらず、その時の精一杯で、1本、10本、100本とこなしていく中で、やがては、耕一さんもみんなの仕上げの流れに沿って作業できる日がくるのは間違いないことなのでした。


和田耕一かめびし醸造職人への道(5)

泉舟掛けの作業をした後、もろみに圧をかけて生汁を絞っていきます。じんわりとしっかりと何度も何度も圧をかけて、4列に並んでいたもろみが3列に。3列が2列にそして最後は、1列になるまで圧をかけていきます。

圧掛けが終わってすっかり生汁が搾り取られたもろみは、カスムキと呼ばれる作業で、風呂敷からはがされていきます。もろみカスと風呂敷を分けていくのですが、そのカスを見ていると、舟掛けの際の出来の良し悪しが一目瞭然で分かってしまいます。だいたい、風呂敷の包み方や、もろみの広がり具合で誰がやったものなのかが、分かってしまうのです。

耕一さんは、カスムキをやりながら、「この風呂敷のたたみ方が悪いのは、自分がやったものだ・・・」とか、モロミが均等に広がらずに、「端が盛り上がりすぎているのも、自分がしたものだ・・・」と、まだまだ未熟な自分の技術に少々落ち込んでしまったようです。

舟掛けの作業は、いたって単純です。一見気楽に出来る作業のようにも思えます。けれど、風呂敷の選び方、たたみかた、もろみの量や、ならし方など、細かい配慮と選択が必要な作業が長時間続くというなかなか大変な作業なのです。

舟掛けがよければ、圧賭けなどのその後の作業が効率よく進んでいきます。その反対の事もありえるのです。そういう意味でも、体に作業がしみこむまでは、まったく気が抜けない作業なのです。

そんな事を実感した耕一さんは、「まだまだダメやな。もっともっと舟に乗りつづけて、先輩の技術を得ないといけないな・・・。」と新鮮な気持ちで、舟に乗るのでした。


和田耕一かめびし醸造職人への道(4)

「今日は舟に乗る作業やで。」先輩の泉さんについていきながら、何がなんだか検討もつかない和田さんです。その日は、「舟掛け」初めての日だったのです。
「舟掛け」というのは、攪拌で格闘していたあのもろみたちの中で、熟成期間を経過したもろみを絞っていくのですが、その為の前段階の作業なのです。

泉さんから説明を受けても、「なんで、だから、どうして、それを舟に乗るの???」といっているのか分かりませんでした。

けれど、舟掛けをする「圧搾場」にきて、圧搾機を見てみるとなんとなく泉さんの言っているニュアンスが理解できたような気がしました。

圧搾機が「舟」に似ていて、その台に乗って作業をするので、「舟に乗る」というのだろうと思えてきたようです。

舟掛けは持久戦です。

舟と呼ばれる所以のある、長さ2メートル幅80センチのステンレスの型枠に四つに仕切られた木枠をのせます。一つ間をあけて、作業をする二人が立ちます。それぞれが、自分の前にある枠に風呂敷とよばれる布で、もろみを包んでいきます。包む方法は、四角な枠の中にきちんと収まるように、もろみを均等にのばして、風呂敷の角を枠の角に合わせて折りたたむように包んでいくのです。それを一枚一枚積み重ねていくのです。

その作業は延々と朝から夕方まで続きます。半日で交代することもありますが、「遠洋」といって、一日中作業にはいることもあります。「遠洋」の場合、一人が一回の船掛けで積み重ねていく枚数は、200枚以上になります。

地味な作業なのですが、一日舟に乗ると、足がパンパンになり、匂いのきついもろみとずっと一緒なので、のども痛くなります。次の日は肩や腰が軽く筋肉痛なんてこともあります。なかなか侮れない作業なのです。

「遠洋」とか、「朝から夕方まで」なんて説明を読まれたみなさんは、「日がな一日のんびりやってるんだろう。」なんてご想像されるかもしれません。しかし、そうではないのです!

初めて先輩の泉さんが舟に乗る作業を見た和田さんの感想から想像していただけると思います。

その感想は、「すげぇー。人間じゃねぇー。なんちゅうスピードだー!!!」であったようです。

(次回、和田さんも見様見真似で舟に乗っていきます。さて、さて・・)

和田耕一かめびし醸造職人への道(3)

和田さんが、最初、攪拌作業を教えてもらったのは入社6年目になる佐藤さんでした。佐藤さんのお手本を見ていると、佐藤さんは結構簡単そうに攪拌棒を動かして、難なくもろみをかき混ぜてしまいます。和田さんも、「なるほど、そういう事か。簡単そうだし、これなら出来る。楽勝!」なんて思ったみたいです。

ところが、いざ自分がやってみると、「佐藤さんみたいにやっているつもり」なんですが、まったく駄目。どうしても力任せに攪拌棒を動かそうとあせってしまい、自分の思い通りには上手くいかなかったみたいです。

その日は、佐藤さんの他の仕事の関係で、後半は、入社3年目になる平島さんについての作業となりました。

最初、平島さんを見て「えっ!女の子なのに攪拌もするの!?」と面食らったようです。が、逆に「女の子が出来るのだったら、自分も絶対出来る」と再び自信が湧いたようです。

が、平島さんの「こんな感じで、ちょっとやってみて下さい。」の一言から、和田さんの自信がまたもや無残に打ち砕かれてしまいました。

必死でかき混ぜる和田さん。思うように動かない攪拌棒。一つの樽を攪拌するのに、時間ばかりかかってしまいます。汗びっしょり、足や腰が痛くなりながらのもろみとの格闘が続いたようです。

その日の和田さんは、「足場の悪い蔵でこんなに大変な重労働をかめびしの人たちはやっているのか!」とかなり驚いたようです。

作業を言葉で伝えるのは簡単ですが、実際に体験してもらうとなかなかコツがつかめるまでは大変です。何度も何度も作業を繰り返していくしか身にはつきません。新人さんの職人への道は失敗と努力の積み重ねなのです。和田さんは、まだ一歩を踏み出し始めた所なのです。

今まさに奮闘中。がんばって下さいね。

(次回和田さん舟に乗ります。はたして、醤油屋に浮かぶなぞの舟とは一体・・・。)


和田耕一かめびし醸造職人への道(2)

6月からかめびしの一員として働き始めた和田さんですが、この時期に新人さんが身に付けなくてはならないのが攪拌作業です。攪拌作業というのは、もろみをかき混ぜてやることで、もろみの熟成をバランスよく促してやる作業です。

かめびしの広い工場の敷地を取り囲むように10以上のもろみ蔵はあります。そしてひとつひとつの蔵の中に、もろみの入った杉樽や杉槽が整然と並んでいます。蔵と樽にはそれぞれ番号が振られていますが、新人さんはまず蔵を覚えるのがたいへんです。蔵によっては入口からして迷路のように思えるような所にあるものもあります。一番初めは先輩について回るのですが、「えっ、そんな所に入っていくの?」なんてびっくりするような所にあるものもあります。何回も攪拌作業をしていくなかで徐々に頭に入っていくのです。例えば「8-5」と聞いて、どこの蔵で何が入っているかすぐにわかるようになっていくにはなかなかな道のりがあります。

和田さんは、常務から攪拌の仕事内容を「蔵のもろみを空気を送ってかき混ぜる仕事よ。」と説明されたようです。もろみを空気で混ぜるといっても、今ひとつイメージが湧かず、ただ、あの独特の匂いのある蔵の中で何が始まるのだろうかと複雑な心境であったようです。

そうなんです。「かき混ぜる」と説明されると、一般に棒か杓かで混ぜるように思われるかも知れませんが、かめびしでは、違っています。

敷地内のそれぞれの蔵まで、エアーが通る管が張り巡らされていて、コンプレッサーから攪拌棒の先まで物凄い勢いでエアーが送られてくるのです。そして、攪拌棒をもろみの中に突っ込み、その先から出てくるエアーでかき混ぜていくのです。

その時、攪拌するもろみの硬さに合わせてエアーの強さを調節するのですが、これがなかなか大変です。出てくるエアーが強すぎると、返り血ならぬ返りもろみに合って、頭から足元までどろどろになってしまいます。また、反対にエアーが弱すぎると、一つの樽のもろみを延々と混ぜ続けなければならない・・・なんて事になりかねません。

経験を重ねていく中で、手早くそして細かく、攪拌できるようになっていくのです。

(次回いよいよこだわりの先輩職人佐藤さんとの攪拌に和田さんが挑みます。)


和田耕一かめびし醸造職人への道(1)

かめびしに待望の新人さんが入りました!和田耕一さん37歳。いたってまじめな風貌の持ち主。常務からのお話では、江戸時代からのムシロ麹製法を守るかめびしで働きたいと望み、今回の入社面接までに三年間機会を待っていたのだそうです。

かめびしでは、正社員になる前にアルバイト期間があります。醤油の醸造についてほとんど知識も経験もない新人さんに二週間「醤油を作る仕事」をお手伝い程度に体験してもらい、その本気度を問う訳です。

お手伝い程度といっても全く畑違いの仕事が始まるのですから、それは新人さんたちにとってはなかなか大変な期間と言えます。

見学しているうちに和田さんはというと、皆があまりにも淡々と当たり前の様に作業をこなしていくので、「これならできる自信がある。」と正式に入社へと気持ちが固まったようです。

そんなこんなで無事和田さんの入社が決まり、かめびしの一員としての日々がスタートしました。

当初は、「これならできる。自信がある。あいつなら半年で追い抜ける!」などと、自信があったようでしたが、実際に先輩社員の中に混ざっての作業が始まってみると、「えっ!?」「うそっ!?」「マジで!?」の連続だったようです。

新人耕一さんが一番初めに痛感したことは、

「見るとやるのとでは大違い!恐るべし醸造職人への道!」

であったようです。

(次回耕一さんがこの時期に新人さんが一番身につけなくてはならない「攪拌」に挑戦していきます。もろみまみれでの奮闘記ご期待ください!)

つづく ・・・


 
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